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ITIL® Master認定は日本のサービスマネジメントレベルを海外に示すきっかけになる

企業が「IT化」を進めてから10年以上経っている。当時は紙の書類を電子化するなど業務の一部分をIT化するレベルだったが、現在ではネットワークが切れたら電話すら使えなくなるほどビジネスに直結してきている。ITがビジネススピード、成果により密接に結びついていく現在、大局観を持ってITIL®  の知識や経験を生かせる人材が強く求められている。

 

今回は、武田薬品工業株式会社でITサービスマネジメントに携わり、日本人で初めてITIL®   Masterに認定された高田紀子氏に、「日本人ならでは」のつまずくポイントなども含めて、ITIL®  Master認定資格についてお話をうかがった。

ITIL® Masterを受験しようと思ったきっかけは何でしょうか?


高田さん: 私は製薬会社でITインフラストラクチャーのトランスフォーメーションやそれに伴う組織改革のプロジェクトマネジメントに携わっています。現役職の前には、ITサービスマネージメントをグローバルで標準化し、その運用の責任も務めました。数年前のEXINのITIL® Manager/Expertの会に参加したときにITIL® Masterの認定資格があることを知りましたが、すぐに「挑戦しよう!」とは思っていませんでした。


その後「挑戦しよう」と思ったきっかけは2つあります。

グローバル規模でのITサービスマネジメントのストラテジー策定から運用責任者までを経験し、組織改革に貢献できたこと。

そして、日本人ではまだITIL®   Masterに認定された人がいなかったこと。

 

自分の知識や経験、遂行したプロジェクトはこの認定資格の要件を満たすと思いました。当時携わっていたプロジェクトは、私のキャリアで最も規模が大きく、私自身の知識と経験を活かしながら、さらなるチャレンジを経験したものでした。

ITIL® Master認定資格は、プロジェクトの中で自分が何をやったのか、どういう責任を持っていたのかなどを説明しなければなりません。認定されれば、自分が苦労して実現したプロジェクトが「適切なプロセスで行われた」「ベストプラクティスを包括的に適用した」という証明になるとも感じました。

 

◉試験に向けて、どのような勉強をしましたか?また苦労したことはありましたか?


普段の業務や出張が続く中で、時間を確保するのは大変でした。ITIL® Master認定試験は、最高で24ヶ月まで時間をとることができますが、私が使ったのは全部で19ヶ月。その中で8〜9ヶ月は何もできない期間があったので、途中まで作成した提出物や、その作成のために振り返った内容を忘れてしまうこともありました。

確保した時間はプロジェクトの振り返りに使うことが多かったです。認定のための提出物計画プロセスでは、ITIL®  を復習する意味でコア書籍の読み直しも行い、自分が組織、プロジェクトの中でどう動いたのか、それが適切だったのかを見直しました。


『試験』と聞くと、新しく知識を習得するイメージを持たれますが、ITIL® Master認定は性質が違います。知識を持っていることは大前提で、その知識を「どうサービスマネジメントに活かしたのか」、また「第三者に証明する能力があるか」が問われます。つまり、「持っている知識と経験をしっかりと行使、実践していた」ことが確認される試験だと思います。

 

◉日本人では高田さんが初めて認定されましたが、試験が英語だったなど、日本人ならではの苦労するポイントはありますか?

 

海外で仕事をしていると「Please explain」と「Please justify」と言われることがよくあります。どちらも「説明してください」と捉えると思いますが、この2つの意図は異なります。
Explainは自分の視点を込めて分かりやすく「私はこれをこう捉えたので、こうしました」と話す。Justifyの場合は、証明や正当化のようなイメージで、第三者が見てもわかる状態で話すこと。「要件にこう書いてあるので、ITサービスマネジメントの定義に沿ってこのアプローチでこれを満たした」といった論理で示さないといけません。
それぞれが違う意味であることを自然に理解し、何を相手に示すかのイメージをもてないと、認定試験ガイダンスを理解する段階でつまずいてしまうかもしれません。
また、この認定試験では、多数の人が関わる大規模なプロジェクトでも「みんなで(WE)」ではなく、「私が(I)」で説明することが求められます。私がプロジェクト、組織で何をやったのか、どういう責任を持っていたのかを文書を用いて説明します。先ほど「第三者に証明できていたかが問われる」と言いましたが、要件によって、運用向けの説明、経営向けの説明など、その時々に求められる適切な説明ができるかが問われます。


「この改善活動により、資本回転率が○○%向上します」、経営の人ならこれで納得してくれるかもしれませんが、IT運用現場の人に言えば「具体的にどんな活動を行えば、目標数値まで向上できるのか?」と問われますよね。こうした“私が”プロジェクトの中でどう立ち回り、IT運用からストラテジーの各フェーズとプロセスを適用したかを説明、証明しなければいけません。これは日本人だと苦手に感じるかもしれません。

 

◉ITIL® Masterに挑戦しようと考えているかたにメッセージをいただけませんか?

 

これまで日本人でも挑戦したかたがいると聞いています。また、さらに多くのかたが挑戦したいと思っていると期待しています。先ほど話したように「説明」の感覚が違うこと、英語力など、多くの壁に阻まれてしまい躊躇しているのかもしれませんが、ITIL® V3が理解できていて、実際に業務で実践している人ならぜひ挑戦して欲しいと思っています。


これから挑戦するかたへのアドバイスとしては、ITIL® Master認定は長期間の取り組みなので、受験期間中は少々生活スタイルを変えたり、有給休暇をとったりすることで短期間で集中的に「いつまでにこれをやる」と計画を立てることをお勧めします。また、自分が組織やプロジェクトで何をやったのかを細かく振り返り、1つ1つの活動の目的や手法などが説明可能な状態に整理することも大切だと思います。

世界でITIL® 資格者が200万人以上いる中で、ITIL® Master資格は約100人にも満たない程度とお聞きしています。世界でも取り組むのが難しい資格だと思いますので、日本人の認定者が増えれば、ヨーロッパやアメリカに対して「日本もITサービスマネジメント領域で欧米と同等のレベルを持っている」と証明できると考えています。


【高田紀子さん】プロフィール:

武田薬品工業株式会社

Global Head of PMO, IT Infrastructure and Operations

ITIL® Master, ITIL® Expert

約12年に渡り、金融・保険および製薬企業でITサービスマネージメントフレームワークやツールの実装をリード。

企業内ITというポジショニングを活かし、ストラテジーからオペレーションまで幅広くITサービスマネージメントに関わることで、知識と経験のバランスを備える。また、知見を広めるために社外の分科会や勉強会等の活動も積極的に行っている。

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